先日の日曜日は長島スパーランドも再開したとのこと。コロナ自粛解禁おめでとうございます。これで鈴鹿サーキットもスペイン村も安心です。
さて連日のコロナニュースでコロナ疲れの方にお勧めしたい「コロナゲーム」。コロナ関連ワードを使ったらマイナスポイントというハラハラドキンチョなゲーム。仕事柄いつも私の連敗続き、いまやお小遣いの2割削減の憂き目に会っております。このままではホイップたっぷりプリンをまた我慢することになりそうです。
というわけで本日はコロナワードにひっかからないように、コロナ前時代の思い出話から。
かかりつけの患者様ならもうよく御存知のはずですが、小生まんじゅう屋の跡取りでございます。
学校から帰ってくるとランドセルを放り出して愛犬のコロリを連れて菓子屋のおじさんの所へ。
なんのためって、それはもちろんお菓子屋の命の次に大事なアンコのお世話にです。大きな鍋にかけられたあんこを四六時中かき回していい塩梅になるのをお手伝いに行くのです。
ちょっと待てって、犬のコロリってなんだ?という声が聞こえてきます。
コロリはちょっとした猛犬で他所の人には新聞屋さんだろうが郵便屋さんだろうがガス屋さんだろうが酒屋さんだろうが決して許さない恐い犬なのですが、お菓子屋のおじさんだけは別なんです。
お菓子屋のおじさんは唯一うちの猛犬がココロ開いた貴重な人なんです。
ん?そういうことではない?あー。
それに関してはジャムおじさんのパン工房にも犬がいたのに、だれもパン工場にチーズとはけしからん!とクレームを言わなかったのとおんなじことで、パン工房にはバイキンまんとかウイルスとかは御法度ですが犬はいいんです。あの時代は。だって師匠も歓迎してましたし…。
さてわが師匠のおじさんは私がアンコの世話に来ると「ちょっと頼んだぞ」といいつつ、裏のお庭へ。おじさんの趣味は盆栽です。
100鉢以上の大切な盆栽に水をやって鹿沼土をブレンドして、油粕の肥やしを足してと忙しいのです。弟子の私がみている間は盆栽三昧です。
そのあいだただひたすら少年は鍋の底が焦げないようにおおきなしゃもじでかき混ぜます。
そんなまんじゅう屋もあの日だけはケーキ屋になります。
そう全国の大人たちがこどもたちにサンタの存在をにおわせるあの日です。
そんな日もいつものように愛犬コロリとまんじゅう工房にやってきますと師匠いつもと仕事が違います。
「今日は何をしてるの?」と聞くと「いいところに来た。これですぐイチゴを買って来てくれ。」と言って伊藤博文を渡します。
早速近所のサワムラ屋さんへおつかいです。
実は私、おつかいは苦手で「豚肉100g」と言われて「焼豚100g」を「いいさかな」といわれて「いいかまぼこ」を買ってくるような子でした。
しかし今回は大丈夫。「どれにしようかしらん」と奥様ポーズで20分ほどイチゴに穴が開くくらい吟味した結果、ついにもっとも大粒のイチゴを選び出したのでした。
実によい仕事をした。そんな気分で帰ってくると師匠は言うのです。
「そんな大きなイチゴを買ってくるやつがあるか。買いなおしてまいれ。」
そう。この時期のケーキの上に乗せるイチゴは諸説ありますがケーキを大きく見せるためになるべく小さいイチゴを選ぶのだそうです。
またやってしまったというキモチと、納得のいかないキモチで複雑ではありましたが。さすが本気モードの師匠が作るスポンジケーキとバタークリームは絶品でまんじゅう屋が作る限定ケーキは予約で完売でした。
忙しかったその日もすっかり暮れてから、師匠が私に言いました。「いつも、すまんな。これもってきな。」
あの特大イチゴが乗った特大イチゴに負けない特大サプライズケーキでした。
いまだあの日のケーキより大きいイチゴの乗ったケーキに私はお目にかかったことがありません。
毎年あの日が来るとナントカノエルとかいろいろ趣向の凝ったケーキが登場します。
ケーキ屋さんのプライドでクリームとスポンジで勝負したいのはまんじゅう屋として同業のよしみでよく理解できます。
が、しかしそれでもケーキの上のイチゴが大きければ大きいほどスペシャルという価値観を捨てきれません。
もし心あるパティシエの方いらしたら「上のイチゴがハンパないケーキ」、いかがですか?
次回は、まんじゅう屋のせがれが医者になるストーリー。ご期待ください。