血のメリークリスマス

クリスマス。というとなんとなーく、献血かなと思うのはどうやらわたしだけらしい。ためしに外来の若い子(患者様)に「X’masだし献血行こうぜ!」と言ってみるのだが、あまりに「なんで?」みたいな顔(‘◇’)ゞ、されるので実際どうなんだろうなと疑問に思った末に匿名リサーチすることにした。

そもそも「献血?」と思うのはたぶんS.G君の影響を多々受けているからなのであろう。S君はわたしの筋トレ3点セット専属パートナーで、若いころから献血に関心が高くて日々の予定を献血という軸で設定していた友人のことである。彼が言うには次、そしてさらにその次の献血に行ける日を考えながらローテーションを組むのである。それはたとえて言うと「小松・鈴木・杉本」の次に必ず来るであろう「谷間」をどうするかが問題なのである。(つまり1度献血すると次の献血までに何日かあけないといけないし、その時にベストなコンディションが約束されているかどうか?ということらしい。)あのペースで献血していたら今頃はとうに100回超している勇者に違いないと思うわけだが、それはまた聞く機会もあるだろう。今思うと我がトレーナーはとっても立派な人だったんだなあと切に思うのである。

世の中に「ご趣味は?」ときかれて「献血です。」そう答える人が身近にいるとみんなそういう人に見えてくるものである。そんな妄想と現実があまりにかけ離れていることもあってこれは是非とも確認せねばと思い立った。今はインターネットという便利なマシーンもあるので予約である。場所はあの天空にそびえたつ双璧の城「タワーズ20」である。

ついにきてしまった。

さて、これもまた昔話だが、まえーに行ったのはとある学会、なんかの発表に行った時だ。場所は学園都市「つくば」ナントカ山のふもと、当時はええ道できたなあ、という街並みに休日あるあるらしいのだが人も車もあんまりいない風景に閑散としてどっこもいくとこないなーと思っていたら、ふとみると会場の隣で「献血やってるよー。」の旗。その時の心情→20例ほどやってみたアブレーションの結果を報告して、オーディエンスから、「たかが20例そこそこでえらそうなこと言うな」みたいに言われるんじゃあないかと緊張して昨日からねむれずにドキドキしてた若造は「コレです!」と思いついたわけだ。ようするにあの献血の針を刺されるドキドキを見事克服すれば発表会なぞ恐るるに足りぬは!。と。以来、学会前に献血がゲンかつぎというかルーティーンになったんだな。

現代に戻ってきてここはタワーズ。行ってみるとなんだここは?まったりとした高級クラブ?(行ったことないけど。)そこは地上20階。眼下に見える人や車はありんこさんのようでそれはいわゆる勝ち組の光景。そこで皆が思い思いのドリンクを「紙コップ」で楽しんでいる。「ご予約の方ですか?」と向こうから声をかけくださり(ここまでいらっしゃったからには逃がさないわよ?)ご案内。昔のデータでも残っているもので「今日は久しぶりにおいでいただきありがとうございます。」(あーあ言っちゃった♡)と。手続きは簡単。事前の医師との面談も含めて15分くらいですんだし、ネットで問診までしとけばもっと短いようだ。献血可能かどうか調べる事前採血も指でほんのわずかな血液で行われる。ただ指先だけにジミに痛い。望めばふつうの採血でもやってもらえるそうな。

眼下の光景
眼下の光景

「最近、バター・フライ肘で右腕が痛くて…」と申し出たら「じゃあ左腕にしましょう。そうしましょう。」と受付の女子は秒で言われたんだが、受付と現場の看護師さんとの考えのすれ違いというのはこういうところだなと実感することとなった。最初に会った看護師さん。左腕をみながら「うーん、なんかどうも、元気のない血管というかイワカンが…ちょっと水分が足りないようだから出直して水分、できたら温かい水分をとってきてちょうだい!」これまで自分のケッカンには自信があったので、これはキンチョウ感からくる脱水傾向?(決して年のせいにはしたくない。)なんだなと。プロの看護師さんというのは見ただけでそこまで察するとはスゴイなと、自己解釈して「とっておきホットココア」と「りんごのなっちゃん(氷なし)」をいただいたところでお呼びがかかる。さて本番の看護師さん。左腕を見るなり「んー、なんかこう、血管が逃げるというかイヤがっていらっしゃるというか…以前もこっちでおやりになりました?」とおんなじ見解でいわれるもんだから「実は…」といってすごすごと右腕をさし出すと「これです。私がもとめていたもの(太い血管)は!」と。はい、予定変更。さすがです。お上手でさっきのジミに痛いやつよりはるかに痛くない。あっという間に400mlたしかにいただきました。と

献血後の初トイレはすわってすることをお勧めします。とか電車に乗るならいちばん前で並ぶのはやめとけ。とか教えていただいた後十分な休養をとるための時間、さきほどのドリンクコーナーでまったりである。無料だし「倒れるぞー」と散々脅されたこともあって、アディショナルタイムも含めて合計7杯もいただいてしまいました。ここで本来の目的をおもいだしあらためて観察してみると、男性は年配の方が割と多いような気がしました。女性は学生さんと思われる若い人が多いようにみえました。成分献血だとDVDも楽しめちゃうヨロ。そんなかんじ?そんななか印象的なマダムが登場。

みえるぞ。わたしにもしんかんせんがみえる。

「はじめてなの。」と。「予約なしで。」と。が、しかしどうやら年齢制限でひっかかるようです。「残念ですが、対象から外れていらっしゃいますんで…」と受付女子は説明するのだが、「遠慮していかん。ワシ、〇〇病院さんで毎月採血してもらっとるくらいだで、だいじょうぶだでええで。はよ、とったってちょお。」「そういうことではございませんので…」との攻防ののち無念の帰宅されることに。きっとこの年末年始に血が足りない。ご協力をお願いします。とテレビかなんかで見て来て下さったご婦人は残念至極の表情でいらっしゃった。わかります。そのおキモチ。きっとクリスマスキャロルが聞こえてきて「戦争だ、災害だ、地球温暖化だ」という時代に自分でも社会に貢献出来ることはないかと望んでいるところに思いついたお手軽ボランティア活動だったんです。それでも安心安全な献血活動を行う上での年齢制限でしょうから、願わくばもう少しだけ早くそのことにお気づきになるべきだったんですね。と、献血も無事終わって、安心したせいか急に長々とよくしゃべりだした臆病者の報告なのでした。

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